富山大学未病研究センター

ムーンショット研究とは

ムーンショット研究とは

富山大学未病研究センター 企画・研究リーダー

富山大学学長補佐 門脇 真


2020年度に新たに内閣府に創設されたムーンショット型研究開発制度は、「我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する」とされています。従来の国家プログラムでは扱えなかったようなハイリスク・ハイインパクトな研究開発、すなわち既存の組織や研究分野の壁を超えて未来社会を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を研究開発の対象として、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)の実現を目指すとされています。

ムーンショット目標1~7のうち、未病研究センターが参画している目標2では「2050年までに超早期疾患の予測・予防をすることが出来る社会の実現」を目指しています。糖尿病や認知症等に代表される慢性疾患等は、各臓器の相互依存的なネットワークの破綻に強く依存すると考えられ、ネットワークの破綻を予見し、破綻する前の「まだ後戻りできる状態」すなわち「未病」の状態から健康な状態に引き戻す方法を確立し、超早期での疾患の予測・予防の実現を目指しています。臓器間ネットワークを包括的に解明し複雑な生命現象を理解するための方法論としては、時空間的な計測情報等を統合的に解析・分析することが必須であり、AI技術をはじめ数理科学的手法を効率的かつ効果的に導入することが必要不可欠であります。

目標2では、東京⼤学国際⾼等研究所の合原一幸特別教授をリーダーとする研究グループに、未病研究センターは参画しています。合原研究グループでは「複雑臓器制御系の数理的包括理解と超早期精密医療への挑戦」をテーマとして掲げ、「未病を予測するためのデータ計測・蓄積と数理基盤開発」、「複雑臓器制御系の数理データ解析による発病の予兆検出」、「発病の予兆を検出して病気になる前に治すための社会実装の体制構築」をマイルストーンとして、2050年までに未病状態での超早期精密医療の実現を目指しています。

2020年4月には、富山大学長の下、8部局、約30名からなる未病研究センター(センター長:齋藤滋富山大学長、副センター長:北嶋勲研究担当理事)を設置し、富山大学として未病研究を重要な研究の柱と位置付け研究推進体制の大幅な強化を行い、2020年12月には、未病研究センターの今後さらなる機能強化のため、和漢研に未病分野を設置しました。富山大学では、合原研究グループとの今後さらなる密接な連携のもとに、未病研究センターを核として、数理科学、生命工学、計測科学、生命科学、臨床医学、疫学等の更なる融合と相乗的発展を図り、未病検出可能な医療機器開発のための産官学連携の強化、未病に対する医薬品等の開発のための産官学連携の強化(未病創薬)により、未病状態での医療介入の優位性を実証して社会実装を目指します。

【参考資料】

  • 2015年5月開催:「キックオフシンポジウム~医薬学と数理学の融合を目指して~」 PDF
  • 2016年5月開催:フォーラム富山「創薬」第43回研究会「『情報科学・計算科学・数理科学から創薬への新展開』~ウェット研究とドライ研究のコラボレーション~」PDF
  • 2018年10月:「数理科学・情報科学と生命科学の融合による未病創薬・未病医療への展開」PDF

2021年4月
富山大学未病研究センター 企画・研究リーダー
富山大学学長補佐 門脇 真